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2011年08月10日

A point of no return

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体重5.8kg 2歳餓死で両親逮捕

この記事を目にして、小さな子供を持つ親なら、自分の子を改めて抱きしめずにはいられなかったかもしれない。ぼくはそうだった。

3.11以降、震災とともに起こった原発事故で、日本は引き返すことのできない新しい領域に入り、放射能とともに、または放射能に対する不安とともに生きていかなくてはならなくなった(少数ながら、以前からそんな状態にあった人もいた)。

原発をすぐに廃止にすることができないなら、この状態は当分続くだろう。もしもエネルギー政策が劇的に転換してエネルギー源とライフスタイルの変更が行われても、「後始末」にかかる年月はそう短くない。

だけど、これはいわば<外の>問題だ(もちろん心の問題でもあるけれど)。

上の記事でいちばん心が痛み、体が歪むような苦痛を覚えたのは、子供が空腹をしのぐためにプラスチックや紙などを食べていたという所見。あまりにもひどいので、忘れていたくてもしばらくこのことばかりを思い出してしまい、寝る前にも、朝起きてからも子供の冥福を祈らずにはいられなかった。

この家族の関係者や、検視に当たった警察官、解剖を行った医師の気持ちにも思いが至った。このどこへも持って行きようのない気持ちを、多くの人が味わっているのだろう。また、多くのコメントが子供を殺した両親に対する怒りを表明しているのはもっともだが、この事件はそんなことで受け止めきれるものではないと思う。

ぼくらはもう、引き返すことのできない「ある地点」まで来てしまっているのだ。ぼくはそう感じて、震撼する。内側から来る、心の中の[放射能」とともに生きていかなくてはならない時代だと覚悟しなければならない。

これは、どこかに住んでいる、とても未成熟で、他者の痛みに対する想像力に欠けた、ある異常な両親が起こした特異な事件と決めつけて終わることはできないほど、身体に刻み付けられる出来事だ。

この事件の記事に対する、ひとつのコメントが目を引いた。幼児を抱えた母親で、「子供を産んだけれど子育てがこんなに大変だとは思わなかった、甘く見ていた。相談する人もいなくて」。という苦しみを述べたもの。それに対して多くの人たちが、慰めや応援のメッセージを書き込んでいた。

こんな時インターネットがあってよかったと思う。こういう母親はすごく多いだろう。彼女は悩みを表明でき、レスポンスを得ることができたので、きっと大丈夫だろう。地域社会が消えていき、子供へのサポートが薄くなっているとはいえ、子育ての苦労を一緒に支えていく手段はまだたくさんある。

子育てがすごく大変だということは、ぼくも一年ちょっとだけだけれど体験してみてわかる。けれど、大変なりに喜びもあるし、子供は何より大切。自分たちが望んで生んだのだし、自分の都合を差し置いても子育てに励む。これが多くの親に共有されている真実だと思う。

しかし、このことが、ダムのはじっこにヒビが入り、それが急速に広がって決壊の兆しを感じさせるかのように、崩れ始めている。そんな嫌な感じが、このごろぬぐえない。

子供をあえて餓死させる、これほど親にとって考えられない行為はない。もし、自分の食物を削ってでも子に与えるということがなくなったら--それどころかその逆を行うならば--たんなる個人的な問題ではなくて、これは人類という種全体の存続にかかわり、種の滅びをはっきりと示唆する重大な出来事だ。

今回だけではなくて、この種の事件が連鎖するということから、人間が種として根本的な転換点に来ていることを感じる。いったいぼくたちはどこへ行きたいのか、もう一度考え直すべきだ。自分という個我を主人公に人生物語を描く、近・現代という人類史の中ではあまりに短い時代が終わりを告げようとしているときに。

このじわじわくるようないやな感じは、心の中の放射能として当分は続くだろう。警察や児童相談所や地域や教育機関や自治体やそれぞれの親が、最善の努力を尽くしたうえでも、この感じはなかなか去らないかもしれない。ぼくらは、これを時代の空気として呼吸しながら生きていく。ちょうど、薄められた、直ちには「致死量以下の」放射能を取り込み続けるように。

ぼくはこう言われているように感じる。人間たちよ、あなたたちは外では原発、内では種の保存への反逆という形で、自らの滅びを選び取ったのですねと。そうなのだろうか? これはもう一度、一人ひとり自分の胸に向けるべき問いだろう。

posted by Dah at 00:00| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Mixiからの移行日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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